役場職員には家族を亡くした方も… それでも仕事した公務員の超超激務! 「宙ぶらりんな避難」と法律の未整備

・10日後に戻ると、避難できない高齢者が家の中で亡くなっていた…

 当時双葉町の役場職員だった今泉さん。公務員は災害時でも町民の安全を守る仕事がある。非難の声かけや情報の提供、食事の提供を行ったという。また、1000人もの町民の安否確認を一人一人行った。さらに、「避難所の移動」に伴う避難計画、輸送計画、部屋割りなど決めることがたくさんあり、ゆっくり寝られる日はほとんどなかった。

 避難して10日後に、仕事で双葉町に戻った。少ない情報をもとに、残された高齢者を避難させる。しかし、冬だったこともあり、「家で亡くなっている人もいた」という。

 やはり「避難に援助を必要とする人」を救うには日ごろから地域のつながりを強めて、逃げ遅れている人に声をかけ、協力し合う「コミュニティ力」が大切だろう。原発避難はそういうことすらできなかった。

 今泉さんの知り合いは、「10日間雑草を食べて何とか生き延びた」という。

 

・地震、津波、原発。「3つの避難」の対応という公務=激務

 双葉町は最初に地震による建物の崩壊から逃げ、さらに津波から逃げ、それから原発事故による放射線から逃げと3つの避難が同時に押し寄せた。当時は相当大変な状況であったことが目に見えてわかる。

 そんな中でも公務員は町民を守るという使命から仕事をしなくてはならず、職員の中には家族を亡くし、つらい思いで仕事をしていた人もいたという。今泉さんも1か月間家族と会えず、連絡も取れず、安否のわからない状況で仕事をしていた。情報が入らないなか、町民からは判断を迫られ、夜まで寝られない状況が続いた。「判断する立場の人は、重い責任がのしかかるから相当大変だっただろう」と今泉さんは語った。

 

・12年経った今も避難状態。「宙ぶらりん」な政治参加・社会参加

 今泉さんは今埼玉県上尾市に住んでいるが、住民票は双葉町のまま12年が経とうとしている。「(町の)情報が入ってこないのが一番不安だ」と今泉さん。

 また、住民票の問題で「政治参加・社会参加については宙ぶらりんな状況」にある。住んでない町の選挙は少ない情報で候補者に投票し、今住んでいる町の選挙はもちろん、決め事にも参加できないのである。本来平等にあるべき参政権。この状況は平等と言えるのだろうか。

 「同じように原発事故があったチェルノブイリでは明確に、逃げる権利があるとし、逃げた人全員に補償をしている。逃げない権利も認めている。しかし、日本はそこをあいまいにしている」と海外と日本の対応の違いを語る矢野さん。

 今泉さんも「日本は自治会を抱えているため、広範囲の避難はパニックを起こす。自治会が大きな動きをできなくさせているのではないか」と自治会制度の問題点を語った。もちろん海外と日本では制度が違うこともあり、難しいこともあるかもしれないが、チェルノブイリのような対応は積極的に取り入れていくべきだと思う。

(加藤)