
2月11日の 『みんながけっぷちラジオ』はNGO「日本国際ボランティアセンター(JVC)」スタッフとして海外で34年間活動してきた谷山博史(たにやまひろし)さんをゲストにお迎えし、「沖縄戦の過去と辺野古新基地建設問題」をテーマにお送りしました。谷山さんは現在、沖縄県名護市で平和活動をしているため、今回は沖縄からリモートでご出演いただきました。
なぜ沖縄へ?アフガニスタンで見た現実
東京都出身の谷山さんが沖縄に活動の拠点を移すきっかけになったのは、およそ4年にわたるアフガニスタン駐在の経験です。アフガニスタンで谷山さんが見たのは、米軍による「罪のない人々の死」という悲惨な現実でした。
アフガニスタンで戦争をする米兵(海兵隊)はどこからやってくるのでしょうか? 実は、日本の「沖縄」です。沖縄は世界の戦争の拠点になっており、米軍に土地を提供する日本は、いわばアメリカが起こす戦争に加担させられていることになります。長らく世界で活躍されてきた谷山さんですが、アフガニスタンの実態をきっかけに、平和活動をするならまずは自分の足元である日本の地で、なかでも沖縄から、という想いに変化していったそうです。
止まらない新基地建設、根底には沖縄への「差別」がある
防衛省が公開している資料によると、沖縄県の全体面積に占める在日米軍施設・区域(専用施設)の割合は70.27%です[1]。国土面積のおよそ0.6%しかない沖縄の土地が7割以上米軍に使用されているのです。現在も辺野古基地建設を巡って様々な問題が起きている最中であり、先行きは見えないままです。米兵による人権侵害や事故が多い普天間基地を移転する目的で30年前に選ばれたのが名護市辺野古地区です。移転は国外と思っていたのに、あろうことか沖縄に「新しい基地を作っている」のが実態であり、普天間基地も未だ稼働している状態です。そのため、沖縄の人々は辺野古基地を「辺野古"新"基地」と呼びます。
この不条理は「差別」以外の何者でもない、と谷山さんは言います。沖縄への差別は戦前の琉球王国時代から存在し、奄美にルーツがある谷山さんの家族(母親)は、生まれた場所の話を一切しなかったとのことです。
日本唯一の地上戦、「家族が家族を殺し合う」その凄惨さを忘れない
日本唯一の地上戦があった沖縄では、県民の4人に1人が亡くなりました。世界で類を見ない凄惨さだと、谷山さんは話します。「アメリカ兵に捕まるくらいなら自分たちで死ぬ」と決起し、ガマ(洞窟)の中で多くの家族が亡くなりました。
戦争を二度と起こしてはいけない、という絶対的な信念を持った「非戦」の遺伝子が沖縄の人々の血には流れ続けています。そんな沖縄の人々が米軍基地建設に反対する想いの強さは宇都宮で暮らす私たちと同じでしょうか。
NIMBY(ニンビー)の墓場、「沖縄」
NIMBY(ニンビー)という言葉があります。"Not In My Back Yard"の頭文字を取ったもので「(迷惑な施設は)自分の庭には置かないで」という態度を指します。刑務所や核の最終処分場、軍事施設などの設置を議論する場面で使用されることがあります。
谷山さんは「本土の人々がNIMBYの態度を取り続けた結果が今の沖縄への基地集中につながっている」と話します。
根本の解決のためには、そもそも基地建設というテーマにおいてアメリカとの間に構造的な差別を生まないこと、外交による「軍拡に依らない平和をつくること」が重要だと強調していました。
谷山さんはうるま市の「自衛隊の射撃訓練場建設の反対運動」についても紹介してくれました。沖縄のとある高校生がこう言ったそうです。「県民みんなで反対の声を上げて施設の建設は白紙撤回されました。しかし私たちは沖縄県だけではなく、日本の他の県にそれを作ることにも反対です」。
NIMBYはこうやって「みんなの問題」として引き受けること、「自分だけ良ければ」を葬り去ることが重要だと感じました。(ラジオ学生:加藤)
聞き逃し再録⇒ https://m.youtube.com/watch?v=7F_a8FcLBm4