
12月17日のみんながけっぷちラジオでは、益子で、風土性に立脚した体験交流事業の企画・運営や、地域調査研究、コンサルティング、事業提案、情報発信、産業振興など「風土性に立脚した」各種事業を行う有限責任事業組合「風景社」の簑田理香(みのだりか)さんと、廣瀬俊介(ひろせしゅんすけ)さんをゲストに迎えた。2008年に仲間4人で会社を立ち上げた。ウェブクリエーター、デザイナー、編集者、アートディレクターの本業の腕を活かして風景社を動かしている。ラジオでは、風景社の仕事、また「良好な風景」の定義から二人が目指す風景について話を聞いた。
土地の風景を守り、未来へ伝える。風景社の役割
きっかけは2009年に始まった益子町の地域再生のためのアートイベント「土祭(ひじさい)」でつながったという。土祭主催者の馬場さんは、「その土地独自の風土に根ざした文化を立ち上げること」を大切にしており、考えに共感した4人は土地独自の文化や芸術、そして風景を守るために風景社を設立したと箕田さんは話す。
“良好な風景”は、自然と人の営みの共存
「良好な風景」と言われて、思い浮かぶものは何だろうか。青々とした山々や田園風景など、緑の多い風景を思い浮かべる人が多いかもしれない。反対に、乱開発され、山肌がむき出しになっていたり、粗大ゴミが山積みにされている風景は、“良好な風景”から遠いだろうか。箕田さんは、良好な風景とは「自然と人間の営みが健全な形で保たれていること」と話す。人間が自然を搾取しすぎていたり、自然の驚異に人間がおびえることなく共存している環境が最善という。
広瀬さんは「人も生き物も健康に生きられる環境の姿」を目指したいと話す。しかし、誰かが「美しい」と言った環境が、他の人も美しいかどうかは別の話。美しさは人それぞれで、都市と自然が共存している環境が好きな人や、緑あふれる環境が好きな人もいる。本当に大事なことを見失わないようにしながら、自分が思い浮かぶ風景を作れるような環境を目指したいと話す。
風景とつながる「世界」の問題
時代が進むと、どうしても失われてしまうものは多い。風景もその中の一つである。広瀬さんがしもつかれを例として説明してくれた。しもつかれは栃木県の郷土料理で、鮭の頭や酒粕、根菜などから作られ、保存に大変優れている。原料は、近年収穫量が減少している。原因は地球温暖化による水温上昇である。秋に上がってくる鮭の数も減少していると広瀬さんは話す。
鮭が上がってきて卵を産み付ける水音や、鮭を観察しに来る小学生、私(蓮井)の実家近くでは毎年秋の風景の要素であった。これらがなくなってしまう日も近いかもしれない。また、鮭の輸入が増えると輸送の燃料消費や養殖いけすでの水質汚濁を増長させる。地球温暖化という世界規模の問題が、私たちの日常生活の中にある風景にまで明確に影響を及ぼしている。こうした広い視点も持ちながら、風景社では環境や景観を切り口とした市民向けのワークショップや街歩きプログラムも行っている。そこに住む人たちの暮らしや仕事と風景のつながりを見つめることで、持続可能な社会の断片が見えてくる。
最後に、箕田さんおすすめの一冊を紹介する。アリス・ウォータース他著、『スローフード宣言――食べることは生きること[海士の風]』。この本をきっかけに少しでも風景に興味を持っていただけることを願っている。(蓮井)
Youtubeでも聞けます→https://youtu.be/to5laKjJtas?si=pRceYTVd3T7lDCU8