「あなたのSNSは、現地の人に届いている」―ガザの戦場での支援―

12月10日のラジオではNGOパルシック(PARCIC)の糸井さんをお迎えし、パレスチナ・ガザ地区に対するイスラエルの一方的な攻撃(戦争)の問題についてお話を伺った。1946年の第一次中東戦争以来、多くのパレスチナ人が故郷を追われ難民となっている。ガザ地区はその難民と子孫が住んでいる“巨大な難民キャンプ”だとも言える。“国境”は2重のコンクリート壁に囲まれ、海からも完全封鎖され「天井のない監獄」とも言われている。

 

推計18万人が死亡、190万人の家が破壊。水食燃料なし。飢餓。

昨年2023107日から事態は再び緊迫し、ガザ地区においてイスラエルによる爆撃、砲撃、戦車と武装兵士による地上戦で、一方的に、武器を持たない民間人への無数の非人道的行為(殺害、拷問、レイプ、略奪等)が行われている。直接死は45300人、行方不明と関連死は推計で18万人、家がない人190万人、道路・上下水道も破壊されて国境封鎖により食料・燃料・水・医薬品などの物資も入らず、飢餓がおこっている。ほぼすべての学校と病院も破壊されている。

ガザ地区は宇都宮とほぼ同じ面積(365平方キロ)に栃木県より多い人口(約220万人)が暮らす超過密都市だ。100年に及ぶイスラエルによる度重なる国際法違反と現在の紛争が織りなす複雑な状況の中、パルシックはガザ地区を含むパレスチナ地域(ヨルダン川西岸地区)での緊急支援活動を展開している。

 

根本的解決のために、「問題を伝え理解者を増やす」アドボカシー活動

パルシックは、災害や紛争で困難に直面する人々への支援を行いながら、農業支援や生業再建などの長期的な協力環境関係を構築する復興支援も行っている。なかでも糸井さんはアドボカシー(権利擁護・代弁)活動を中心に取り組んでいる。単なる支援に留まらず問題の根本的な解決を目指し、パレスチナを含む国際問題世論の形成に焦点を当てる。特に、現地で出会った人々のために働くことは、糸井さんにとって大きなやりがいで、出会った人の置かれている現状や苦境を、多様な機会と複数のメディアを使って広報し、理解して協力してもらう。オンライン講座やYouTubeでの情報発信、日本政府(国会議員、政府要人)への働きかけなど、多岐にわたる活動をしている。

それとともに現実のNGO現地事務所の運営は、パレスチナと日本の時差や緊急事態への迅速な対応が求められ、「夜間の対応が日常的」だそうだ。さらに、イスラエルの攻撃下にあるガザの現地スタッフとの連絡は不安と隣り合わせだ。現地では飢餓状態が日に日に悪化しており、飲料水もない。住民の9割が家を奪われテント暮らしを強いられている。実際にUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の職員が命を落とすという事件もあり「連絡を見るのが怖い時もあった」と話す。

 

「不処罰」をゆるす国際社会を変える

糸井さんが問題視するのは、ガザやパレスチナの現状惨状やイスラエルの傍若無人を前にして、停戦に向けて「適切に介入できていない国際社会の姿勢」である。そのため民間人を攻撃しないなどの国際法の遵守を求める声を広げるとともに、日本国内ではオンライン講座やSNSを活用して状況を伝えている。さらに、外務省への要望書提出や国会での超党派の「人道外交議員連盟」や「日本パレスチナ友好議員連盟」に対する勉強会を開催するなど、政府レベルでのアクションを促す活動も展開している。毎日無実の人が殺されている事実において、国際政治を変えるにはまずは日本国内世論を変えなければならない。

 

「民際」―民と民が支え合うこと

「ガザの人々はSNSなどを通じて世界中の人の声や反応を目にしています。そのため私たち日本人がパレスチナの状況を知り、それを周囲の人に伝えることが重要です」という。糸井さんは国際ではなく「民際」として、市民と市民が互いに支え合って助け合う社会を目指したいと語った。

 

現在ガザでは外国人ジャーナリストがイスラエル軍の攻撃で次々に死亡するという組織的殺害も行なわれており、「現状を伝える人」の命も脅かされている。だからこそ、今起こっていることを軽視せずに自分にできることを行動に移すことの重要性を再確認した。自分もSNSや寄付を通して少しでも現在の状況改善のために努力したい。(ラジオ学生 山本)