知事選・市長選への公開質問状 ⑪「こども基本条例」を策定しますか?

(こどもに関する施策の理念の転換)

国はこども施策を社会全体で総合的かつ強力に実施していくための包括的な基本法として、日本国憲法、子どもの権利条約に則り「こども基本法」を制定しました。(2023年4月施行)

 そしてこども施策を決める上で大切にすることを6つ挙げています。

①すべてのこどもは大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないこと。(差別の禁止)

②すべてのこどもは、大事に育てられ、生活が守られ、愛され、保護される権利が守られ、平等に教育を受けられること。(子どもの生命・生存及び発達の権利)

③年齢や発達の程度により、自分に直接関係することに意見を言えたり、社会のさまざまな活動に参加できること。(子どもの参加する権利)

④年齢や発達の程度に応じて、意見が尊重され 、こども の 今とこ れ か ら に とって最もよいことが優先して考えられること。(子どもの最善の利益・子どもの意見の尊重)

⑤子育ては家庭を基本としながら、そのサポートが十分に行われ、家庭で育つことが難しいこどもも、家庭と同様の環境が確保されること。

⑥家庭や子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくること。

これらはこれまでの子どもに関する施策の理念から大きく転換し、子どもは「大人から守られる存在」という考え方から、それだけではなくて、子どもも「ひとりの人間として人権(権利)をもっている」、つまり、「権利の主体」であるという考え方から出発しています。

 政策転換の理由については、子どもを取り巻く日本の現状の深刻さにあります。

●いじめの重大事態件数や小・中学校における不登校のこどもの数が過去最多(令和4年度児童徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)

●10代の死因の最多は自殺(令和4年人口動態調査)

● 児童虐待の相談対応件数が過去最多(令和5年度全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料)

● 相対的貧困の状態にあるこどもの割合は11.5%、特にひとり親家庭は44.5%と高い(令和4年国民生活基礎調査)

●諸外国に比べてこどもの自己肯定感や幸福感は低い(令和元年我が国と諸外国の若者の意識に関する調査及び国連児童基金の調査)

●2022年の出生数は統計開始以来、最少の数字となり、合計特殊出生率は過去最低(令和4年人口動態調査)

これらの社会課題を解決するための、「こども観」と「子ども政策」の大転換として「こども基本法」があり、2024年には「こども大綱」も閣議決定されました。担当大臣は子どもたちへ「おとなが中心となってつくってきたこの社会を『こどもまんなか社会』につくりかえていく」と宣言しています。

 

(栃木県の現状)

県、市、町で条例づくりをする意味は、①子ども施策推進体制が整備される。②子ども参加・子どもの意見表明の推進。子ども権利施策の具現化といった条例に基づく具体的な事業の展開、③子どもや住民への子どもの権利学習の推進、子どもの権利に関する意識啓発・理解が促進される。④条例に基づく子どもの権利委員会、推進委員会などによる評価・検証システムの構築があげられます。

 栃木県の子どもに関する条例では、子ども・子育て支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、「とちぎの子ども・子育て支援条例」(2019年)がありますが、当時の子ども・子育て支援法に基づくもので、「大人が子どもを育てるための条件整備の条例」であり、もちろん「こどもまんなか」でもありません。

 また、栃木県では、こども基本法にある「栃木県こども計画(仮)」を策定中ですが、本来は、栃木県版の「子ども基本条例」を新たに策定したうえで、「栃木県こども計画」が作られるべきと考えます。後述しますが、こども基本法の理念が「栃木の子ども一人ひとりに伝わること」が意味のあることだからです。「条例づくりを子どもと一緒にやること」が重要です。(なお、「こども計画」づくりも子ども参加が必要です)

自治体の条例の策定状況は、全国では2024年3月現在で69の自治体にのぼります。これらには理念だけの条例は含まれず、「子どもの権利保障を総合的にとらえ理念、制度、しくみ、施策などが相互に補完しあうような内容を備えた」条例を数えたものです。栃木県内では25市町のうち2市(日光市:子どもの権利に関する条例(2013)と那須塩原市:子どもの権利条例(2014)です。(『子どもの権利保障を図る総合的な条例一覧』子どもの権利条約総合研究所参照)

宇都宮市では「宮っ子を守り・育てる都市宣言」(2024年2月)が制定されましたが、当事者である子どもをはじめ、子ども支援に関わる大人たち、さらには一般市民への認知は低調です。宣言ではなく、先述した「子どもの権利保障を総合的にとらえ理念、制度、しくみ、施策などが相互に補完しあうような内容を備えた」こども基本条例の策定が必要であると考えます。

子どもに関する施策を策定する基盤となる条例は、子どもにとって、より身近な市町で策定されることが望ましいと思いますが、県の条例策定が、市町での条例策定の後押しになることから、ぜひ栃木県が先陣を切って、こども基本法に基づく「こども基本条例」を策定していただきたいと思うのです。

 

(提案)

〇「こども基本法」が施行された今、「とちぎの子ども・子育て支援条例」の全面的な見直し(改廃)を行い、「こども基本法」の理念に基づいた栃木県の「こども基本条例」の策定を提案します。そのうえで「栃木県こども計画」を策定する必要があると考えます。

○また、こども基本法が施行されても、それだけでは当事者である子どもたちには届きません。栃木の子どもたちと条例を一緒につくることで、子どもたちにこの基本法の考えを届け、「こどもまんなか社会」を実感してもらいたいと思います。

例えば中野区は、条例制定を見据えた審議を進めていくことと並行して、可能な限り「子どもの意見」に耳を傾けるために「出前授業」や「意見徴収」を積極的に行いました。また条例の内容を想定した質問を用意し「ワークショップ」や「アンケート調査」、Webで公開し意見を聴取するなどで、たくさんの子どもの意見を集めました。子どもたちの生の声は大人の想像を超えて、子どもの現状を浮き彫りにし、条例に盛り込まれる事例もありました。また区民に広く子どもの権利を知ってもらうために普及啓発事業も行いました。企画展示をはじめ子どもの権利をテーマにした区長と区民によるタウンミーティングを行い、区民の理解も得るよう努めたそうです。このように「子どもの意見をどのように条例に反映させていくか?」「子どもと一緒につくるとはどういうことなのか」を先進地に学びながら栃木県らしいこども基本条例を策定したいと考えます。

〇国は、こども基本法やこども大綱に則って、こどもに関する施策の指針を新しく策定又は現行の運営指針の改定をしています。特に「こどもの居場所」については、「こどもは家庭を基盤とし、地域や学校など様々な場所において、安全・安心な環境の下、様々なおとなや同年齢・異年齢のこども同士との関わりの中で成長する存在であるが、社会構造や経済構造の変化により、こども・若者が居場所を持つことが難しくなっている現状にある。喫緊の課題や個別のニーズにきめ細かに対応した居場所をつくることで、こどもの権利を守り、誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援を行う必要がある。」として「こどもの居場所づくりに関する指針」を策定しました。

栃木県でもこの指針に基づいて、多様な居場所づくりを推進していただきたいです。また、この指針に書かれている居場所とは児童館をはじめ、プレーパーク(冒険遊び場)、子ども食堂、フリースペース等、放課後児童クラブ、放課後等デイサービスなど既存のものも含まれます。これらの施設や事業がこの指針に基づいて運営されているかどうか評価するとともに、早急に質、量ともに見直す必要があると考えます。

 

■国の選挙が終り、10/31からは栃木県知事選、11/10には宇都宮市長選がはじまります。そこで、私たち栃木県内の市民活動団体等の有志による公開質問状(15問)を公表し、候補者全員に「はい」「いいえ」「どちらでもない(考え)」を回答してもらうという取り組みを始めました。

サイト>https://koukaishitsumon.net/

●読むだけでも面白いです。見てください。回答は10/31に公表します(到着次第・順次)

●拡散希望!