7月23日の「次世代に伝える。原発避難13年目ラジオ」では、宇都宮在住の中学2年生、石川歩佳さんをゲストに迎えた。
「震災の記憶はない。だから自分の目で確かめに行く」
歩佳さんは2023年10月に行われた、「ともしびプロジェクト」の-東日本大震災スタディツアー@双葉・浪江―に参加した。震災遺構である浪江町立請戸小学校の見学と避難経路の追体験、そして被災者の自宅見学を経験した。当時、福島県に住んでいて生後3か月だった歩佳さんは「記憶はないけれど、他人事に感じられない。自分の目で確かめたい」という想いで参加を決意した。このツアーに参加するまで、歩佳さんにとっての東日本大震災は、テレビのニュースや新聞記事の写真で見る光景が全てだった。この大きな災害が本当に起こったのかどうか、初めはにわかに信じ難かったという。
震災後、12年間変わらない風景。見て、触れて、止まった時間を少し進める。
歩佳さんがツアーに参加して、最も印象に残っているのは請戸小学校の風景。津波の被害を受けた小学校の校内は半壊で、体育館は卒業式の準備の痕が残っていた。壁にかかった垂れ幕は、当時そこに人々が実際に生活していたという事実をよりリアルに感じさせた。しかし、それとは裏腹に、大きく凹んだ床から地震の破壊力と恐ろしさを感じ、衝撃を受けたという。避難経路の追体験は、当時の請戸小学校の教頭先生のガイドで行われた。
そして、被災者の自宅見学では、床に砂がかかっており、12年間使われていない震災から時が止まったままであることを実感した。このお宅は原子力発電所から直線距離4km以内にあり、つい近年までは帰還困難区域になっていた。歩佳さんは、自宅内にある当時のままのピアノを演奏した。そして、そこで行われていた生活や人々の想いに触れた。
東日本大震災は教科書。学んで「これからの災害」に備える。
ツアー参加後、歩佳さんの東日本大震災への見方は大きく変わったという。これから起こりうる災害に対する防災意識だ。「過去に起こった震災も含め、必ず教訓というものが残る。それをこのツアーに参加したことで、自身の胸に刻むことができた」と語る。東日本大震災という出来事とツアーでの経験を未来で起こる災害に活かす。そのために、防災に関する資格取得を目指したり、東日本大震災関連のイベントへの参加を継続していきたいと話してくれた。もう一度現地に行くことでまた新しい学びがある、と歩佳さんの向上心は絶えない。
現在、東日本大震災について学校で大きく取り上げて学ぶことはあまりないように感じる。理科の授業で地層のメカニズムとして学習したり、避難訓練が行われたりすることはあるが、それでは東日本大震災の記憶がない今の子供たちは当事者意識を持って取り組むことは難しいだろう。歩佳さんは「同世代の学生たちにも、全員がもっと防災意識を持って、身近に潜む危険に関心を向けてほしい」と語る。
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私も出身は福島県の海沿いの町のため、今回の歩佳さんのお話は、一被災者としてとても共感できるものだった。歩佳さんの体験談を伺うと、震災を経験した人の話を聴きながら現地を直接歩き、自分の目で景色を見ることは、忘れてはならない記憶を継承していく上でとても大切なことだと改めて感じる。この東日本大震災という出来事を、ただの悲劇として終わらせるのではなく、これからの私たちの未来に活かす糧とすることが重要だと思う。同じ悲劇を繰り返さないために、この日常の有難さと身近に潜む危険への意識を再確認していきたい。(ラジオ学生:ちばなお)
「みんながけっぷちラジオ」×「次世代に伝える。原発避難13年目ラジオ/若い世代からみた震災とは」石川ほのかさん2024/07/23
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