薬物依存からの回復には、正直になれる仲間と、正直になれる場所が重要

86日の「みんな崖っぷちラジオ」は、ダルク(DARC)女性シェルターの柚子さん(ニックネーム)をゲストにお迎えし「生きづらさを抱える人たちへのメッセージ」というテーマで放送した。放送では、柚子さんの薬物依存所になったきっかけと薬物中毒の自分の暮らし、ダルク女性シェルターでの、薬物依存からの回復生活、柚子さんの「生きづらさを抱える人へのメッセージ」を伺った。

 

家に居場所がない子供時代。「悪い仲間が居場所」だった。

ダルク女性シェルターとは、寮での共同生活を通して、依存症を抱える仲間と回復を目指すリハビリ施設だ。ダルクとは「Drug Addiction Rehabilitation Center」で、直訳では薬物依存症社会復帰センターとなる。柚子さんはシェルターで寮長を務めながら自身も回復生活を続けている。

 ダルクに「つながる」前の柚子さんは、暴力的な家庭に育ち小学生のころから「大人の顔色」を見て生きてきた。家には居場所がなかったという。中学生になる前から非行にあこがれ、格好いい不良の男子からシンナーを勧められ、「嫌われたくない一心で」違法と知りながら使用したのが始まり。その後、シンナーの代わりに酒を飲むようになり、アルコール依存症になり、さらに覚醒剤に進んだ。依存したのは「男と薬物」というが、それは「居場所がない」ので男に依存したのだという。

 刑務所に何度も出入りしたが結局薬はやめられず、寝ても覚めても「薬しか頭になかった」という。約10年前に刑務所から出てきた時の担当弁護士から「ダルクに行ってみないか」といわれ、半信半疑でここに来たという。

 

「治らない病気」だから、毎日やめ続ける実践をする

 

 ダルク女性シェルターでの回復活動におけるポリシーを、「仲間と行事を楽しむこと」だと言う。ダルクでの回復活動の一つに季節に沿った行事の実施がある。春は花見、夏はウナギを食べたり、海に出かけたりする。こうした仲間との楽しいプログラムを通して、覚醒剤、シンナー、飲酒を中心としていたときに意識することのできなかった四季を楽しめるようになったという。ここでのキーワードは、自分一人の楽しみではなく、「仲間と」である。

 そして施設では、毎日のミーティング(ダルク・ミーティング)がある。これは薬物依存者が回復していくにあたって重要な役割を担う。「言いっぱなし、聞きっぱなし」の話し合いで、薬物を使っていた時の話や、今の心境を「正直」に話す。それについてミーティング参加者(仲間)は否定も肯定もしない。そうした集まりを毎日繰り返す。

 そして「今日一日、薬物はしない」ことを毎日「今日一日・・・」と繰り返すのだ。ポイントは「自分は薬物依存者で、治らない病気。だから毎日、辞め続けるのだ」という方法をとることだ。それほど依存症は強い誘惑なのだ。そして「先行く仲間」は、その道すじ、道しるべであるという。ダルクでは、「先輩」という呼び方をせず、「先行く仲間」という呼び方をする。そこには、自分が教えてもらったことを人に教えるから、誰かよりも偉いということはない、という考えがある。自分が薬物に頼らなくても生きていける方法を実践するのも自分だけの力ではないことを実感する、と柚子さんは言う。

 こうしたミーティングやプログラムによって「薬物や、アルコールがなくても人生は楽しめるということを体感・体験していく」と柚子さんは言う。

 

正直ななれる場・仲間・毎日の積み重ねが、「生きづらさ」からの回復

 

 柚子さんは、女性シェルターで寮長を務めながら、薬物依存症からの回復生活を続けている。中学生の頃にはじめて薬物を手に取り、それ以降、依存症を抱えてきた。柚子さんが考える「回復」とは、単に薬物をやめることだけではない。自分の抱える「生きづらさ」に気付き、向き合い、正直になって誰かに助けを求められるようになることこそ回復において大切なことだ。ダルクでの「自立」とは「助けてください」が言えること

 シェルターで、スタッフを務め始めたころは、「みんなを回復させるんだ」という気持ちから、支配的になり、うまくいかなかったこともあるという。そんな時、前の施設長に気持ちを正直に話せるようになったことで、自分で気が付かなかった問題に気づけるようになり、「今の仲間との暮らしをとにかく楽しむこと」だと立ち返ることができたという。「相手はかえられない、自分が変わるしかない」といつも教わっている、と柚子さん。

 最後に、柚子さんは、生きづらさを抱える人たちには、周りに助けを求めるようにしてほしいと話した。ダルクの施設や、地域のある薬物依存者のミーティングである「NA」などに連絡をすれば、話を聞いてもらえたり、アドバイスをもらえたりする。難しいことかもしれないが、まずは行動を起こしてもらえれば、と話した。

 

放送後期

「依存はいけない」、と一言で片づけていては、依存症からの回復を促すことはできない。自分の気持ちと正面から向き合って、依存しないやり方で楽しむ人生を知っていければいいと思う。生きづらさを感じる人たちに何ができるのか。ダルクやNAのオープンミーティング(薬物依存者でなくてもだれでも参加できるミーティング)に行くといいと思う。(ラジオ学生 野田)

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