今回のゲストは、認定NPO法人フードバンクうつのみやで相談員をしている小澤勇治さん。フードバンクを利用する人の傾向、そして自立した生活を送れるようになるためには何が必要かをインタビューした。
増える年金世代の女性の困窮
困窮者には年金生活世代が多く、特に女性の割合が増加しているという。
「原因は、生活できる年金が少ないから」と小澤さん。「特に女性は、パート労働で働いてきた人が多く、年金が少ない。自営業の夫婦で夫は年金の保険料を払っていたが妻は払っていなかったため、夫が亡くなった後、年金をもらえなかったという事例もあった」と言う。
続けて、女性の方が男性より寿命が長いことを考慮しなければならない。また貧困で社会的なつながりが少なくなっていくことも懸念材料と言う。例えば、冠婚葬祭に参加できず、人との交流が減ってしまっている人もいる。話を聞いて、豊かさというのはお金のみならず、人とのつながりなど心の豊かさも含まれると思った。経済的な貧困がそれを奪っていると感じた。
増える子育て世代・ひとり親の困窮
ひとり親家庭の貧困率は50.8%で2軒に1軒が貧困に苦しんでいる。「フードバンクにも子育て世代(30、40代)が増加していて、それは教育、生活にお金がかかっているからですね」という。問題なのが、多くの女性が養育費をもらっていない。
「例えば、中学の娘がいる女性は、DVで逃げるため離婚をしたが養育費を夫からもらっていない。それは、離婚届を提出していないためで、正式に離婚をしていないと手当はもらえない」と小澤さん。
「多くのシングルマザーが相手と関わりたくないという理由で養育費を受け取らないが、子供の教育に費用を負担できず、それは子供の未来を奪っているかも」と。
たしかに、貧困の連鎖を断ち切るためにも、親同士養育費に関して話し合う必要があると考えた。
一時的な支援で終わらせない! 制度を知らない(知らせない)ことが問題
最後にフードバンクを利用している人々が自立して暮らせるようになるには何が必要かを聞いた。
1つ目は、「生活するための知恵を学校で教えること」。様々な福祉・労働などの制度について学校で教えられないため、急に生活が厳しくなった時にどうするかが分からないのではないか。また、「政府に貧困している人々を救う制度を要求する、政府を監視することも必要だ」という。
2つ目は、「就労支援をしている機関など別の機関につなぎ、食料を配布するのみの一時的な支援で終わらせないようにしている」という。
3つ目は、「日本の申請主義の制度を変えること」という。「申請権を行使できるよう、どのような制度があり、条件はどのようなもので、どのような時に、どこで、どのような手続きをとればよいのかを周知する」と小澤さん。日本は、制度の周知が努力義務にとどまり、行政機関の義務が明確になっていないのは課題だという。
授業でホームレス支援をしている大学の先生が話していたが、貧困に苦しむ人は携帯を持っていないため炊き出し支援をやっていることをそもそも知らない。直接支援があることを知らせなければならない。高齢者は特にスマホを持っていないため情報に自らアクセスできないと思った。
(ラジオ後記)
年金の問題、ジェンダーの問題、病気、失業、金銭管理などフードバンク利用から見た生きづらさは多様である。フードバンクはあくまで一時的な支援であるが、母親に対する就労支援だったり、困った時どこにつながれば良いか情報提供をして社会保障制度につなげるパイプの役目になっている。貧困の連鎖を断ち切るための支援が国の制度の中に必要だと感じた。