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「世間知らずの教員」ではなく、「子供たちが自由に将来を選択できる手助けになりたい」

4月2日のゲストは、あしなが学生募金の事務局で活動をしている絵面ゆきのさん(白鷗大学3年)。あしなが学生募金での活動は主に2つ。日本とアフリカの遺児への「募金」と、その対象者である遺児(高校生、大学・専門学生)を全国から集める「集い」である。あしなが学生募金はほぼ同年代から少し上の大学生・専門学生・短期大学生が主体となって、親をなくした子供たちの進学支援の活動を続けている。絵面さんもその1人である。

 

世界中の遺児を救うため、まずは日本とアフリカから

 

募金活動は1年に2回(春・秋)に全国的に開催、年間約2.5億円があつまっている。一方でその寄付(奨学金)の対象は日本とアフリカの遺児である。日本だけでなくアフリカを対象にしているのは2050年に人口が約25億人に達し、世界人口の4分の1を占めると予想されているからだ。しかし、この人口増加に対し、実際にアフリカで高等学校に進学できている割合は10%を切っているという。あしなが学生募金は、寄付金を日本とアフリカの遺児の教育支援に充てることで、世界中の遺児を救うことを見据えている。

 

辛い気持ちを吐き出す場が心支えになる

 

あしなが学生募金のもう一つの活動である「集い」では、年に1度、支援対象者の学生(奨学生)たちを集めて、自分の生い立ちや辛いこと、今後の展望を語り合い共有するという。いわゆるピア・カウンセリング(ピア=仲間)の集会だ。遺児の若者たちが苦しんでいるのは、「アルバイトや家事の負担が大きく、睡眠や勉強の時間がとれない」ことだけではない。その辛さを打ち明けられる人が身近にいないことにある。親友や信頼できるがいたとしても、なかなか相談できないという。結果、自身の内に溜め込み、ウツなどの精神疾患になる人も少なくない。いま話題になっている「ヤングケラー」の状態と似ている。だから、この「集い」は、同じ境遇の学生がありのままの気持ちを吐き出せる唯一の居場所になっている。この5泊6日の「集い」は、辛い生活の中に希望を見出すための貴重な時間となり、「気持ちを吐き出せる」ということの重要性がわかる。

 

「お金がない=夢を諦める」の連鎖を断ち切る

 

 

教員を目指している絵面さんは「将来向き合っていく子供たちの現状を知り、その未来の選択肢を増やす手助けがしたい」と語ってくれた。あしなが学生募金の構成員には、支援対象である遺児と同じ境遇の学生が多いという。自身も生活で手一杯であるにも関わらず、他者に目を向け募金活動に奮闘している。これからの未来をつくる子供(若者)たちが、自分の進む道を自由に選択できるような社会にしていくことの重要性を改めて認識した。このあしなが学生募金の活動を筆頭に、社会制度から教育支援の地盤を整えていく必要があることを、1人でも多くの人が認識し、教育にお金をかけられる世界になってほしいと感じる。(千葉奈央)