あたりまえをぶち壊す。アウトサイダーアートに秘められた魅力とは?
4月19日「みんな崖っぷちラジオ」のゲストは、もうひとつの美術館の五味渕仁美さん。もうひとつの美術館は「みんながアーティスト、すべてはアート」がコンセプト。国籍や障害の有無、専門家であるなしは関係ない。既成の枠に捉われない自由な発想の作品を展示している。専門用語ではこのようなアートを「アウトサイダーアート」や「アールブリュット」と呼び、障害者などハンディキャップを持つ人の作品が有名だ。
五味渕さんは「アウトサイダーアートの魅力は、構図の大胆さや色使いにある」と語る。「こちらが見ていて『その色の横にそんな色置くの??』と思うような色を塗っていても、最後には美しい作品になっている、こちらの『あたりまえ』をぶち壊してくれる」という。
多くの人は無意識のうちに正確に綺麗に絵を描こうとしてしまう。空は青色、りんごは赤色といった決まった概念があって、その通りに描く。学校の美術の授業でも、どんな風に描いたら正解で、優れた作品になるのか決まった基準があった。きっと「自由に描こう」と思ってキャンパスに向かっても、自由には描けない大人がほとんどだろう。アウトサイダーアートの作家はそんな常識には捉われず、自分の内にあるものを描きたいように描いている。見た人の心には、その縛られない自由さや作品に秘められた生命力がダイレクトに響く。
アートは不要不急?『今しかできない体験』が将来の心のあり方に影響する。
もうひとつの美術館では展示会の他に「もうひとつのクラブ」というワークショップを毎月開催している。「もうひとつのクラブ」は正解のない創作クラブ活動。親子連れの参加者が多く、子どもはペンキまみれなりながら、大人も負けじと夢中になって、参加者たちは思い思いの制作活動を行なう。
コロナ禍で不要不急の外出や娯楽活動は自粛。コロナウイルスだけでなく、戦争や芸能人の自殺、世間では暗いニュースが続き閉塞感が漂う。五味渕さんは「『今しかできない体験』が将来の心のあり方に影響する」と語る。さらに「文化がないところに戦いがある、アートは人間にしかできない活動だからこそ残して続けていかなければならない」と続けた。アートは不要不急ではない。心を開き自分を表現する活動は、崖っぷちに立ったときこそ必要な活動だ。【佐藤優】