○ 「どんなにつらいことがあっても立ち直るきっかけはある」…避難経験で伝えたいこと
「次世代に伝える。原発避難10年目ラジオ」は、3月13日に3時間の特別番組で最終回を迎えた。この日のゲストは3人。以前ゲスト出演していただいた志賀仁(しがひとし)さんと榊原比呂志(さかきばらひろし)さん、そして宇都宮大学国際学部の清水奈名子(しみずななこ)さんをお呼びした。
放送は3部構成。第1部では、福島県双葉町(ふたばまち)から栃木に避難した志賀さんと榊原さん。志賀さんは、福島から栃木に避難した住民らが孤独を感じないようにという想いでつくられた当事者団体「ふくしまあじさい会」の事務局長を務めている。今後の活動について訊くと「10年以上が経ったいま、栃木での永住を決める人が増えた。そのため、今後は近くに住む地域の人とどう関わり合うべきかを考えていきたい」。また「故郷の現状を視察したい。避難者だけではなく、(栃木の)地域の人も連れて」と話した。コロナ禍でなかなか思うように活動できないが、どうか前向きな気持ちを保ってほしい。
また、今年6月から始まる双葉町の住民帰還の「準備宿泊」をしている榊原さんは、故郷(双葉町)の自宅からオンラインでの出演。帰ってきたことに喜ぶ様子が画面越しに伝わった。「自分が被災するかもしれないという心構えが大切」、「どんなにつらいことがあっても立ち直るきっかけはある。投げやりにならず耐える気持ちが大事」といった言葉が印象的だった。
○若者が被災地の現状を見学。「行って実感!」「自分事に」「復興とは何か?」
放送に先だって2月末に、ラジオ学生の櫻井、佐藤、鈴木、宮坂(元ラジオ学生)が双葉町の現状を視察した。第2部は、その感想を話し合うコーナー。避難当事者ではない学生が、実際に被災地を訪れて感じたことを赤裸々に話した。
(鈴木)…実際に現地に行ったことは強みになった。視察ツアーを通して分かったことを伝えていく責任があると思う。今後も双葉町の変化を見ていきたい―
(宮坂)…原発が作られる地域に皺寄せがいってしまう問題を知った。こういった社会的な問題を今後は自分ごととして捉えていきたい―
(佐藤)…被災の問題はいまだに残っている。「人がいないのに復興」とは何か。震災を過去のことと捉えたまま風化させてはいけないと思った―
震災当時は小学生だった若者が、実際に現地に赴いたことで原発事故の問題をリアルに捉えることができた。
○「映画ではなく実際にあること」。原発避難は「若い世代に伝えるべき問題」
第3部では、宇都宮大学で原発避難の問題に携わっている清水奈名子准教授をゲストにお呼びした。清水さんは震災当初から被災当事者の聞き取り調査を行なっている。話の中で特に印象的だったのが「原発事故により苦しむ人がいる現状は、映画ではなく実際にあること。若者はそのような暗い話を受け止める力がある」と言い、「若者と『何を大事にすべきか』を今後も一緒に考えていきたい」というメッセージ。臭いものに蓋をするのではなく、問題を真摯に捉えていくべきだ、と力強く語った。私自身、原発避難のことについて学校で学ぶ機会があまりなかった。この番組を担当して初めて知ったことが山ほどある。今後も真剣に学び考えを深め、同じ若い世代に伝えていきたい。(櫻井)