5月25日のみんながけっぷちラジオは公益社団法人「認知症の人とその家族の会」栃木支部世話人代表の金澤林子さんをお迎えしてお送りしました。ラジオでは「認知症の人と家族の会」のことや、私も実際に行ってみたカフェの様子をお話しました。
認知症、100人いたら100通り。全国に463万人!
金澤さんはもと老人ホームの施設長さんで、その後、認知症の人や家族の居場所となる「認知症カフェ(オレンジサロン)」を開いています。義父、義母が認知症になり介護の大変さを知ったことがきっかけだそうです。
認知症を少しおさらいします。ビックリなのは人数。なんと463万人! 栃木県人口の2.3倍。認知症は「症状」。病気ではなくて、原因となる病気は70種以上とのこと。主なものに脳の神経に異常なたんぱく質が蓄積されておきる「アルツハイマー型認知症」、脳梗塞・脳出血等でおこる「脳血管性認知症」、日本の小阪医師が発見した「レビー小体型認知症」などがある。
認知症の中核症状(器質的は変化)は、記憶障害、見当識障害、実行機能障害、理解・判断力の障害、失語・失認・失行の症状があり、その結果「周りの人が困る症状」(周辺症状)として、徘徊、異食、暴言暴力、不安、抑うつ、無気力などが発生するとのこと。
金澤さんは「症状なんて認知症の方が100人いたら100通りあるのよ。みんなそれぞれ性格も生い立ちも違うように」とのこと。
「できないことがあってもしょうがないわよね、って思う心」
例えば「人から指示をされたとき、返事をしただけで固まってしまった」という場合、金澤さんはその人の普段の立ち居ふるまいから「どうして動けなくなっているか」と想定し、本人にわかりやすい言葉、指さして物の場所を具体的に説明するか、もう一度同じことを言うか、その人に合わせた対応方法を取るそうです。
認知症の症状は十人十色。その人の「背景をくみとって対応」といっても、その大変さは相当だろうなと思いました。金澤さんは「認知症と向き合うには忍耐と、優しさのゆるしが必要なのよ。そばにいる忍耐力、できないことがあってもしょうがないわよね、って思う心」と話します。
能動的に活動し楽しむ居場所…やりたいことをやってみよう!という明るい雰囲気
取材で、金澤さんが毎週土曜日に開いている認知症カフェに私もお邪魔しました。集まったのは若年認知症(65歳以下の認知症)や初期認知症の女性4人くらい。家族もつきそいできて、その場にいたりします。その日は、参加者が集まるまで「昨日印象に残った出来事」を話したり、自分で買ったり、作ったりしたお弁当を食べたり、鬼怒川沿いをごみ拾いしながら「来週のオレンジサロンでやりたいこと」のお話しでした。
カフェという名前でも、彼女たちはお茶を飲みに来たお客さんではなく、自身が能動的に活動し楽しむ居場所で、みんなでやりたいことをやってみよう!という明るい雰囲気でした。
私は終日そこにいたのですが、参加者はみな「ちょっと忘れっぽい人」というぐらいの印象でした。冗談を言い合ったり、ユーモラスな会話をしていたり、言われなければ認知症の人だと分かりにくいんです。その「分かりにくさ」が逆に、周りからの理解を難しくさせているのかも、と思いました。
でも、認知症の人の家族は毎日つきっきり。すると、どうしても心に余裕がなくなり、家族間でトラブルに発展することも多々あります。そんなときに認知症カフェのような居場所があると、本人も楽しく過ごせ、一方で家族も自分の時間を過ごせる「息抜きの場」というわけです。
「少し忘れっぽい」個性として理解できたら
昨年の5月コロナウイルスの感染が拡大したときにもサロンを開けていたそうです。コロナ禍でどこにも行けない人のために、誰か一人でも居場所を必要とする人がいたら必ず開けていたという金澤さんには「もしものとき」の覚悟も備わっていました。「認知症を病気じゃなくて、ただの個性として寄り添えたら嬉しいわよね」と金澤さんが話していたことが印象に残っています。病気の人と一括りにして特別扱いするのではなく、「少し忘れっぽい」個性として理解できたら今よりも認知症の方にも優しい世界になるのかなとお話していました。
「また認知症カフェへ行こう」と。そのときは3時のおやつに食べるように美味しいお菓子を持参しようと思います。(佐藤)